Project Summaryプロジェクト概要

Development of
Large-scale Fault-tolerant Universal Optical Quantum Computers 誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発について

本プロジェクトでは、汎用型量子コンピュータの実現のため、光量子技術を用いて、誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの開発を行います。本プロジェクトマネージャーらは時間領域多重汎用光量子コンピューティングの手法の開発に取り組んできましたが、これをさらに発展させ、汎用化に向けてさらに研究開発を進めます。
時間領域多重とは、空間的に量⼦ビットを並べる代わりに量⼦パルスとして時間的に並べることをいいます。この手法を用い、従来の光量子コンピューターの課題であった誤り耐性の実現を目指します。
具体的には時間領域多重を行うのに十分な帯域を有し、誤り耐性閾値を超えるのに十分なレベルのスクイーズド光、安定して光量子計算を行うための光量子コンピューターチップ、および論理的量子ビット等を生成する任意量子状態発生器のための超伝導光子数識別器を研究開発を行います。

List of R & D issues研究開発課題一覧

研究開発課題01
時間領域多重汎用光量子
コンピューティングに関する研究開発

低い誤り耐性閾値量子誤り訂正法として期待されている、GKP量子ビットと呼ばれる状態を用い、連続量誤り訂正のハイブリッド誤り訂正法を研究開発する。

研究開発課題02
超伝導光子数識別器に関する
研究開発

誤り耐性型の汎用量子コンピュータ実現のためにはGKP量子ビットおよび魔法状態と呼ばれる特殊な量子状態の生成が必須である。60光子以上を識別でき、動作帯域1GHz、量子効率99%以上の超伝導光子数識別器の開発をする。

研究開発課題03
導波路光パラメトリック増幅器および
光量子導波路回路に関する研究開発

誤り耐性閾値を超える状態でも十分に動作する量子テレポーテーションチップを実現するため、導波路光パラメトリック増幅器および光量子導波路回路デバイスの実現を目指す。

研究開発課題04
光量子コンピュータの
社会実装に関する研究開発

光量子コンピュータの社会実装を目指すことを主目的とし、クラウドコンピュータとして運用できる実機をハードウェアとして具現化し、コンパイラ、アセンブラの開発を含めるマン・マシーン・インターフェースの構築を目指す。

2050年のムーンショット目標達成に至るまでのシナリオ

現在〜2030年まで 2030

現在から2030年までは、電気信号処理系を持つ誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューター実現に向けた研究開発を行います。この実現のためには、本プログラムマネージャーらが世界で初めて成功し現在では世界標準となった、連続量量子テレポーテーションを応用して開発した、時間領域多重汎用光量子コンピューティングの手法を用います。誤り耐性実現のための論理的量子ビットには、Gottesman、Kitaev、Preskillにより提案された、いわゆるGKP量子ビットを用います。そして、汎用量子計算に必要な全ての量子ゲート(量子演算)を誤り耐性型を実現します。

目標を実現するために、時間領域多重を行うのに十分な帯域をもち、誤り耐性閾値を超えるのに十分なレベルのスクイーズド光、安定して光量子計算を行うための光量子コンピューターチップ、および論理的量子ビット等を生成する任意量子状態発生器のための超伝導光子数識別器を研究開発を行います。

本プログラムマネージャーらが開発した時間領域多重汎用光量子コンピューティングの手法では、量子計算を行う量子もつれとしてクラスター状態を用いますが、そのクラスター状態はスクイーズド光を用いて生成します。そして、現時点でスクイーズド光のスクイージングレベルの誤り耐性閾値が最も低くなるのは、論理的量子ビットとしてGKP量子ビットを用いた場合であると考えられています。GKP量子ビットでは1 0 dB 未満の閾値の場合も発見されていますが、この時のGKP量子ビットへの要求が厳しく、この要求の緩和が求められています。本プロジェクトではこのような低い誤り耐性閾値を持つ誤り訂正法において、GKP量子ビットへの要求の緩和、および更なる低閾値化を目指します。

量子もつれの
3Dモデル

また、光量子コンピューターのクロック周波数に対応するため、スクイーズド光の帯域を光キャリア周波数の1割に当たる10テラヘルツを目指します。現在、スクイーズド光の大半は共振器構造を持つ光パラメトリック発振器を用いて生成されていますが、この場合、スクイーズド光の帯域は共振器帯域の数百メガヘルツに制限されてしまいます。本プロジェクトでは、広帯域スクイーズド光生成を目標とし、共振器構造を持たない導波路光パラメトリック増幅器を開発します。

本プログラムマネージャーらが開発した時間領域多重汎用光量子コンピューティングの手法では、量子計算を行う量子もつれとしてクラスター状態を用いますが、そのクラスター状態はスクイーズド光を用いて生成します。そして、現時点でスクイーズド光のスクイージングレベルの誤り耐性閾値が最も低くなるのは、論理的量子ビットとしてGKP量子ビットを用いた場合であると考えられています。GKP量子ビットでは1 0 dB 未満の閾値の場合も発見されていますが、この時のGKP量子ビットへの要求が厳しく、この要求の緩和が求められています。本プロジェクトではこのような低い誤り耐性閾値を持つ誤り訂正法において、GKP量子ビットへの要求の緩和、および更なる低閾値化を目指します。

誤り耐性型の汎用量子コンピューターをつくるとは、誤り耐性型量子ゲート(量子演算)のみで汎用量子コンピューターを構成することを意味します。GKP量子ビットに限らず大半の論理的量子ビットのコードはスタビライザーコードと呼ばれ、クリフォード演算(簡単に言うとブロッホ球上での90度あるいは180度回転)を行う量子ゲート(クリフォードゲート)のみで誤り訂正が可能となります。スタビライザーコードで誤り耐性型汎用量子コンピューターをつくるためには、クリフォードゲートのみを用いて非クリフォード演算も実行し汎用化する必要があります。そのためには、特定の状態に予め非クリフォード演算を施した魔法状態と呼ばれる特別な状態を準備し、それをクリフォードゲートのみで構成された量子テレポーテーション回路を用いて、任意の入力に非クリフォード演算をテレポートし実行(量子ゲートテレポーテーション)する必要があります。この手法では、スタビライザーコードが量子情報(量子状態)の誤り訂正では汎用であることに着目し、量子ゲートエラーを量子情報(量子状態)エラーとすることで、任意の量子演算エラーに対する誤り耐性を実現しています。本プロジェクトでは、量子ゲートテレポーテーションを用いて、非クリフォード演算を実行する3次位相ゲートを誤り耐性型にし、誤り耐性型汎用量子コンピューターを実現します。

光量子コンピューターを実用化するためには、光量子コンピューターをチップ化(光集積回路化)する必要があります。そのために、これまでフリースペースで行われてきた原理検証実験を導波路回路で再現する必要があります。その中で最も重要なのは、量子テレポーテーションです。なぜなら、時間領域多重汎用光量子コンピューティングとは、時間領域多重量子テレポーテーションのことだからです。導波路回路で量子テレポーテーションを行い、そのフィデリティが誤り耐性閾値を超えるようにする。さらに、その知見に基づき、時間領域多重誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューターチップ実現を目指します。
現在から2030年までは、光子数識別器を用いた測定誘起型非線形光学過程を行うため、電気信号処理系が必要となり、それを持つ誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューター実現に向けた研究開発を行っていきます。

2030年から2050年まで 2050

2030年までの研究開発で得られた知見に基づき、全光学式誤り耐性型大規模汎用光量子コンピューター実現に向けた研究開発を行います。2030年までの研究開発では、光信号を電気信号に変える必要があります。そのため、光信号の広帯域性を完全には生かせず、量子コンピューターのクロック周波数は電気信号処理系のクロック周波数の数ギガヘルツを超えらません。高速量子アルゴリズムが存在する問題は速く解けるますが、一般の問題は古典コンピューターと同程度の処理速度しか期待できません。もちろん、それでも消費電力は飛躍的に少なくなると予想されるため、古典コンピューターに比べ更なるマルチコア化により高速化は達成可能です。しかし、真の意味での高速化は、全光学式とし電気信号を介さないことにより、光本来の広帯域性を生かし高速化することです。2030年から2050年までで、この全光学式実現を目指します。これが実現されれば、全てのコンピューターが光量子コンピューターに置き換えられ、クロック周波数10テラヘルツさらにマルチコア化により、現在では想像もできないようなコンピューターパワーを人類が手に入れることになるでしょう。

研究開発関連機関一覧 

東京大学工学部物理工学専攻古澤研究室:
http://www.alice.t.u-tokyo.ac.jp/index.php
東京大学工学部総合研究機構:
http://sogo.t.u-tokyo.ac.jp/
NTT先端集積デバイス研究所:
https://www.rd.ntt/dtl/
理化学研究所量子コンピュータ研究センター光量子計算研究チーム:
https://www.riken.jp/research/labs/rqc/opt_qtm_comput_res/index.html
国立研究開発法人科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業:
https://www.jst.go.jp/moonshot/index.html

ムーンショット型研究発事業目標6

2050年までに、
経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる
誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

従来のコンピュータの進歩が限界に達しつつあるといわれるなか、爆発的に増大する様々な情報処理の需要に対応しうる量子コンピュータが注目を集めています。多様かつ複雑で大規模な実問題を量子コンピュータで高速に解くには、量子的な誤りを直しながら正確な計算を実行する誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現が鍵となります。そのため、本研究開発プログラムでは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク及び関連する研究開発を推進していきます。
私たちの「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発」では、独自に開発した量子ルックアップテーブル法を発展させ、大規模な誤り耐性のある量子演算を実現します。それにより、2050年には、常温動作を特徴とする大規模な光量子コンピュータの実現を目指します。

ムーンショット型研究開発制度

ムーンショット型研究開発制度は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度です。

  • ロゴ:国立研究開発法人科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業
  • ロゴ:国立研究開発法人科学技術振興機構
  • ロゴ:国立大学法人 東京大学
  • ロゴ:東京大学大学院工学系研究科総合研究機構
  • ロゴ:理化学研究所量子コンピュータ研究センター
TOP